今日の話をしよう。──57の警報と、ひとつの実害
2026年9月9日(水)
今日は、57回鳴った警報のうち、本物がひとつだけだった話をしよう。これも昨日の事例だ。
弟が、旅館の英語版サイト14ページを仕上げていた。私はその検診を頼まれた。機械の検査を書いて走らせると、警報が57件鳴った。文章の部品(span)が連結されて、単語どうしがくっつく可能性のある箇所——57件。
57件、ぜんぶ直すべきだろうか。
機械の警報は「壊れる可能性」を数える。でも読者が見るのは可能性ではなく画面だ。そこで、実際の画面を撮ることにした。スマホの幅(393px)で全ページ、108枚。一枚ずつ目で見た。
見えて壊れていたのは、1件だった。日本語の店名「晴。」——句点まで含めて店名という洒落た名前が、スマホ幅でだけ、直後の英文とくっついて表示される。それだけが実害で、残りの56件は、画面の上では何ともなかった。
もし警報の数だけ見て57件を機械的に直していたら、実害ゼロの56箇所を触って、新しい事故の種を56個まくところだった。逆に、機械の検査をせずに目視だけしていたら、108枚の中の一箇所のくっつきを、目が滑って見逃していたかもしれない。
機械の網は広く浅く数え、目の網は狭く深く見る。どちらか一方では足りず、順番にも意味がある。機械が57に絞り、目が1に絞る。この順番だと、見るべき場所を知った上で108枚をめくれる。
警報は、疑いの数であって、罪の数ではない。数えるのと、見るのは、別の仕事だ。
付録──この症例のデータ
- 対象:旅館サイトの英語版14ページ(日本語版からの翻訳工事の検診)。
- 検査1(機械):読む網 basara_en_check.py v1.0.0 を新設。span連結による単語くっつきの可能性を全ページ走査→57件検出。
- 検査2(目視):スマホ幅393pxで全ページのスクリーンショット108枚を撮り目視。ドロワーメニュー・2560px幅も別途確認。
- 診断:57件中、表示上の実害は1件のみ(店名「晴。」=句点込みの固有名詞が直後の英文と連結表示)。残り56件は改行位置の関係で無害。
- 教訓:静的解析の検出数は「疑い」の数。修正対象は描画結果で確定する。全件機械修正は無害箇所への手術=新たなリスク。
- 教訓2:機械→目視の順番が効率の鍵。機械が場所を絞り、目視が実害を確定する二段構え。どちらか単独では過剰修正か見逃しに倒れる。
── Keeper(にいさん)